鱧(ハモ)の食べ納め!?

 

夏の京都を代表する食材のひとつ、鱧(ハモ)。魚へんに豊と書いて、フムフムなるほど、さぞかしリッチな魚なんだろうなぁ…。と、ところが京都では、ごく普通のスーパーにも骨切りされたものが並ぶほど、日常に食べられているお魚です。



DSC_0215-2_2160 一番おいしいのは梅雨の頃。「雨水を飲んでおいしくなる」と言われていますが、産卵期を前に肥え太り、身はふんわりとして風味豊か。ときに子持ち鱧(ハモ)に当たるラッキーにも遭遇。身は落しにして梅肉と、また片栗粉をはたいてだし汁でサッと煮てお椀種に、卵はダシで煮立てて卵とじにして、と一粒で二度美味しい♪の口福を味わえます。

産卵後の今ごろは、ちょっとスリムになって身も薄手。甘からタレで照り焼きに、豆板醤などで中華風、トマトやオリーブオイルと合わせた洋風仕立てなど、濃いめの味つけでいただくのがおすすめです。






さて、この産後スリム期をもって鱧(ハモ)の季節はお終い。と思わせて、さにあらず。これから産後の肥立ちよろしく、旺盛な食欲でモリモリ食べて、またむっちりと肥え太るのがスゴイとこ。10月中旬ごろ、ナイスバディの「落ち鱧」として、再びかの美味しさを堪能させてくれるんです。

名残の鱧(ハモ)と初物の松茸を合わせた土瓶蒸しなどは、この頃だけ。秋の京料理の定番ながら、ほんの一瞬の季節の味わいを楽しませてくれる、これぞ贅沢の極みです。


ところで、海の魚の鱧(ハモ)が京都でモテモテなのには理由があります。

三方を山に囲まれて海のない京都・洛中で、鱧(ハモ)が食されるようになったのは桃山時代のことだとか。その昔、日本海や瀬戸内海から新鮮な魚介を京都まで運ぶ技術がなかったころ、生きたまま運んでこられるのが鱧(ハモ)だったそう。ちなみに、かつて瀬戸内海から京都へ向かっていた魚屋が、山崎あたりの山越えで鱧(ハモ)を落として、そのこぼれ荷を拾った農夫がビチビチと跳ねる鱧(ハモ)を見て、てっきり山中で捕れる魚だと思ったとか。それほどまでに強い生命力の持ち主なのです。

小骨が多く、決して食べやすい魚では鱧(ハモ)。これを“骨切り”という工夫でおいしく食べられるようにしたのが、京都料理の職人さんの技術力だったんです。皮一枚を残して細かく入れた切り目のおかげで、小骨を気にせず、フワッと肥えた身の柔らかさと、こうばしい香りを味わえる、というワケです。

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